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COLUMN · GUIDE

鍵をなくしても作れる?「鍵穴から鍵を作る」技術の本当のところ

家の鍵を全部なくしてしまった——でも大丈夫、鍵屋なら鍵穴から鍵を作れます。ただし「作る」より「交換」が正解なことも。墨田区東向島の鍵職人が、鍵作製のリアルと、3年後に鍵が戻ってきた怖い実話を語ります。

解説・職人ノウハウ 2026-06-10

はじめに:3年後に戻ってきた鍵

まず、ある実話から始めさせてください。

※本コラムで紹介するエピソードは、お客様のプライバシー保護のため、内容の一部を変更・脚色しています。

夜10時ごろ、「鍵を交換してほしい」というご依頼がありました。現場で事情を伺うと、お客様はこうおっしゃいました。

「鍵をなくしたから交換してほしいんです。……見つかったんですけどね」

見つかったなら良かったじゃないですか、と私は言いました。すると——

「その鍵をなくしたのが、3年前なんですよ。それが今日、家族で外食して帰ってきたら、家の鍵穴に刺さってたんです。『見つけました』って紙がくっついて」

ぞっとしました。

警察も呼んだそうですが、家の中が荒らされた形跡はなく、事件としては扱われないという結論に。でも気持ちが悪いから交換してほしい、というご依頼でした。

落ち着いて考えてみてください。これが意味するのは——「3年間、その鍵を持っていた誰かが、いろんな家の鍵穴に差して、どの家の鍵かを確かめて回っていた可能性がある」 ということです。

善意で届けてくれたのかもしれません。でも、もしそうじゃなかったら……? 私はこの話を聞いて、本気で鳥肌が立ちました。

今日は「鍵をなくした時、作るべきか交換すべきか」という話を、こうした現場のリアルとともにお伝えします。

「鍵をなくした」とき、まず確認すべきこと

「家の鍵を全部なくしてしまった、スペアもない」——こうしたご相談はよくあります。その時、私たちが最初に確認するのは 「どうやってなくしたか」 です。

これには大きく2つのパターンがあります。

パターン①:鍵だけをなくした

財布や定期入れとは別に、鍵だけをどこかに落とした・なくしたケース。

この場合、鍵を作る(複製する)か、シリンダーを交換するか、選択肢があります。ただし——基本的には交換をおすすめします。理由は後述します。

パターン②:身分証明書と一緒になくした

これが 最も危険なパターン です。

免許証・保険証など、住所が記載された身分証と鍵を一緒に落とした場合、拾った人にとっては「この住所の、この家の鍵がこれですよ」と教えているようなもの。

この場合は、一刻も早く鍵交換 してください。作製している場合ではありません。爆速で交換すべき状況です。

「離れた場所で落としたから大丈夫」は通用しない

冒頭の3年後エピソードがまさにそうですが、「身分証と一緒じゃないし、家から離れた場所で落としたから大丈夫」とは限りません。

世の中には、本当に変わった人がいます。拾った鍵を持って、3年かけていろんな家を試して回る——そんな執念を持った人間が、現実に存在するのです。

だからこそ、鍵をなくしたら、「心の安心」のためにも交換をおすすめ しています。

「鍵穴から鍵を作る」技術の正体

「鍵をなくしても、鍵屋なら鍵穴から鍵を作れる」——これ、一般の方からすると魔法のように見えるそうです。実際にどうやって作るのか、種明かしをします(具体的な手法は防犯上お伝えできませんが、概要を)。

鍵作製には大きく 3つのパターン があります。

① バイクの鍵

鍵穴を見て作ります。

詳しい方法や道具は防犯上お伝えできませんが、大体のバイクの鍵は 30分ほど で作製できます。難易度としては、鍵屋になりたての新人でも、1週間ほど練習すれば作れるようになるレベル。バイクの鍵は比較的シンプルなのです。

② 車の鍵

車の鍵作製には2つの方法があります。

ひとつは、バイク同様に鍵穴を覗いて作る方法。

もうひとつは、シリンダー(鍵穴)を分解して取り外すと、「キーナンバー」 という鍵の形状を特定できる番号が記されていることがあり、それをもとに鍵の形状を割り出して作る方法です。

車の鍵は、意外とパターンが少ないのが特徴。だからこそ作製しやすい面があります。

③ 家の鍵

これが一番難しい。

家の鍵は、シリンダーを分解して、内部の構造を見ながら作製 します。慣れていないとできない作業です。

そして、ここが重要なポイント——家の鍵を「作る」と、むしろ高くつくことが多い のです。

なぜ「作る」より「交換」が安いのか

意外に思われるかもしれませんが、家の鍵の場合、鍵を作製するより、シリンダーごと交換した方が安く済むことが多い です。

理由はシンプルで、家の鍵の作製は手間と技術を要する難しい作業だから。手間がかかる=費用が上がる、というわけです。

一方、シリンダー交換は、新品の部品に取り替えるだけなので、作製より工程がシンプル。そして何より、交換すれば防犯上も安心 です(なくした鍵が悪用される心配がゼロになる)。

だから私たちは、家の鍵をなくしたお客様には、基本的に交換をおすすめしています。

では「作った方がいい」のはどんな時か

例外もあります。店舗や事務所で、鍵を20本も30本も配っているケース です。

この場合、シリンダーを交換してしまうと、また20人・30人全員に新しい鍵を配り直さなければなりません。それは大変な手間とコスト。

こういう時は、なくした1本だけを子鍵(複製鍵)として作製した方が、トータルで安く済みます。

もちろん、なくさないのが一番なんですけどね。

「これは作れない」鍵もある

「鍵屋なら何でも作れるんでしょ?」とよく聞かれますが、答えは No です。

よく考えてみてください。「ちょっと練習したら誰でも作れちゃう鍵」を、防犯製品として日本のメーカーが作ると思いますか?

作れない鍵の代表例

  • ディンプルキー(鍵にくぼみが多数あるタイプ):基本的に作製できません
  • メーカー認証が必要な高防犯鍵(MIWA PR、KABA カバスター等):メーカー認証ルートが必須
  • 現行の最新ギザギザ鍵:一見シンプルに見えても、作製は難しい

実際に鍵屋が「鍵穴から作製」できるのは、比較的古いタイプの鍵 が中心です。最新の防犯鍵ほど、複製が困難に設計されています。これは、防犯製品として当然のことなんです。

(なお、解錠時に鍵を作って開けるという技術も存在しますが、防犯上の理由からここでは詳しく書きません。)

なぜ本人確認を厳重にやるのか

鍵作製・鍵開けの際、私たちは 本人確認を必ず行います。「身分証を見せてください」とお願いすると、時々「なんで?」という顔をされますが、これには明確な理由があります。

法律で定められている

特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律の第10条に、こう定められています。

錠取扱業者は……顧客の依頼に応じて建物錠の特殊開錠を行うときは、その者の氏名及び住所を確認するよう努めなければならない。

努力義務ではありますが、カギテルでは必ず実施しています。

そもそも、考えてみてください

もし本人確認なしで誰の家でも開けてしまったら——他人の家を「自分の家です」と偽って、いくらでも侵入できてしまう ことになります。鍵屋が空き巣の手伝いをしてしまうことになりかねません。

だから本人確認は、お客様を守るためにも、社会を守るためにも、絶対に欠かせない手順なのです。

身分証だけじゃない、「雰囲気」も見ています

実は、身分証の確認だけでなく、本人の挙動・雰囲気・なくした理由の説明 なども含めて、総合的にチェックしています。

長年やっていると、話が二転三転する人は分かります。

「ここは息子の家です」と言っていたのに、「息子さんに連絡取れますか?」と聞くと「息子はいません」と答えたり。説明の矛盾がすごい人もいます。

こういう場合は、警察の立ち会いのもとで開錠作業 を行うこともあります。少しでも怪しいと感じたら、無理に作業を進めず、安全を最優先します。

鍵作製の現場エピソード

最後に、鍵作製にまつわる思い出を。

初めてのイモビライザー鍵作製

私が技術屋として一番感動したのは、初めて車のイモビライザー(防犯機能付き)の鍵を作製できた時 です。

イモビライザー対応の鍵作製は、長らく私にとって「できない壁」でした。勉強して、練習して、時には失敗もして——試行錯誤を重ねた末に、ついにお客様に技術を提供できた時の感動は、今でも忘れられません。

職人として、できなかったことができるようになる瞬間というのは、本当に嬉しいものです。

基本姿勢は「めっちゃ頑張る」

これまでたくさんの鍵を作製してきました。お客様が困っている以上、私は「何とかしたい」という気持ちで毎回作業させていただいています。

基本的に、めっちゃ頑張ります

——ただ、繰り返しになりますが、家の鍵の場合は 作るより交換した方が、防犯上も費用上もおすすめ です。これだけは、しっかりお伝えしておきます。

まとめ

状況おすすめの対応
鍵だけをなくした基本は交換(安心のため)
身分証と一緒になくした即・交換(爆速で!)
店舗・事務所で大量配布している鍵1本だけ作製の方が安いことも
ディンプル・高防犯鍵作製不可、メーカー対応
バイク・車の鍵作製可能(鍵穴・キーナンバーから)

鍵をなくした時、「作る」か「交換」かは、状況によって最適解が変わります。そして家の鍵に関しては、防犯と費用の両面から、交換をおすすめする ことが多いです。

「鍵をなくしてしまった」「スペアもない」——そんな時は、慌てず、まずお電話ください。状況をお伺いして、作製か交換か、お客様にとって一番良い方法をご提案します。

そして冒頭の「3年後に戻ってきた鍵」の話を、どうか忘れないでください。鍵をなくしたら、心の安心のためにも、交換を検討する価値は十分にあります。

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取材後記(執筆メモ)

このコラムは、カギテル代表・有田光志への取材をもとに構成しました。「3年後に『見つけました』の紙とともに鍵が鍵穴に刺さっていた」実話、「鍵作製の3パターン(バイク・車・家)」「家は作るより交換が安い理由」「キーナンバーから鍵を割り出す手法」「本人確認の挙動チェック」——どれも現場の鍵職人にしか語れないリアルな知見です。鍵作製の具体的手法は防犯上の配慮から伏せつつ、職人の本音をできる限りそのまま文章化しました。

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